5Gで使われる電波
今回は5Gで使われる電波についてです。
5Gで求められる一つの特徴が超高速通信です。超高速通信を実現するには大容量の通信路を確保する必要があります。これはよく高速道路の車線を拡張することに例えられています。無線通信の場合は通信路は電波です。そして同時に通信できる情報量は、使用する電波の周波数の数によります。これは高速道路でいうと車線の数といったところでしょうか。
車線が増えれば一度に走行できる車両の数増えるのと同じように、使える電波の周波数の数が多ければそれだけ同時に伝送できる情報が多くなります。通常は用いられる複数の周波数の電波の周波数は連続しており、その連続した周波数の幅を帯域幅と呼んだりしています。この帯域幅をいかに広く確保するかが超高速通信の鍵となります。
なお帯域幅とは別に周波数帯という言葉もよく出てきます。これは電波の周波数によって電波の種類を区別する場合に用いられる用語です。例えば、4Gでは、周波数帯として2.1GHz帯の電波が用いられていますが、実際に使用される電波の周波数は例えば2130MHz~2150MHzの間の20MHzの帯域幅(NTTドコモの基地局送信の場合)のものになります。
5Gでは通信速度を上げる手段として、不連続な周波数帯の電波を束ねて一つの通信回線として用いられるキャリアアグリゲーションやこれまで移動体無線通信での利用が進んでいなかったミリ波帯などの高周波数の電波の活用が検討されています。
具体的には5Gに割り当てられる周波数帯は大きく、6GHz以下のSub-6GHz帯と呼ばれる周波数帯域と、24GHzを超えるミリ波帯(準ミリ波帯も含む)と呼ばれる周波数帯域に分けられます。
5Gの標準化を行っている3GPPの仕様では前者はFR1、後者はFR2というグループで区別されており、FR1は410Mhz~7.125Ghzの範囲内でさらに32種類の周波数帯が、FR2は24.245GHz~52.6GHzの範囲内で、4種類の周波数帯が規定されています。先日、日本でも携帯電話サービス向けに周波数の割り当てが行われましたが、そこではFR1からは3.7GHz帯と4.5GHz帯が、FR2からは28GHz帯が使用されることになっています。帯域幅としては100Mhzを超える帯域が割当てられるようです。
それではこの2つの周波数帯、Sub-6GHz帯とミリ波帯にはどのような違いあるのでしょうか。
まずSub-6Hz帯はすでに3G/4GやWiFi(IEEE802.11)などですでに使用されている実績のある周波数帯域であり、技術的課題が限定的であり、また過去の技術資産との親和性が高い点がメリットです。例えば、アンテナの長さが電波の周波数に依存している点などを考慮すると、アンテナ周辺の技術についてはある程度の4G以前の資産が流用できるものと思われます。一方で、すでにモバイル通信での利用が進んでおり、新たにまとまった広い周波数帯域を確保しずらいとデメリットがありますが、これについてはキャリアアグリケーションにより複数の細切れの帯域をまとめて一つの通信路していくといったことがなされていくものと思います。
一方、ミリ波帯ですが、モバイル通信の分野での利用が進んでいなかったため、周波数帯域幅に余裕があり、超高速・大容量通信への対応に好都合であるというメリットがあります。但し、ミリ波帯の電波はより低い周波数の電波に比べて減衰率が大きく、伝送距離を長くすることが難しくなるというデメリットがあります。またさらに高周波ゆえに直進性が高く、障害物があると電波が容易に遮られてしまうというデメリットもあります。つまりミリ波帯では、送信できるエリアが小さくなり、また電波が届かない場所が生じる可能性が高いということになります。しかしながらこれらの課題はビームフォーミングと呼ばれる技術により伝送距離を延ばしたり、スモールセルと呼ばれる基地局を多数配置することで電波のカバー率を高めることで解決されていくことになります。
まとめるとこうなりますね。
FR1(Sub-6GHz帯) | FR2(ミリ波帯) | |
周波数帯 | 410Mhz~7.125Ghz | 24.245GHz~52.6GHz |
メリット | 過去の技術が流用しやすい | 広い帯域が確保しやすい |
デメリット | まとまった広い帯域確保が難しい | 遠くまで電波が届きにくい 障害物に弱い |
特にミリ波帯の利用に向けては、まだまだ実用化に向けて多くの技術的な課題や改善点が残っているといる思われます。5G関連ビジネスを行う企業にとっては、この変化をうまくとらえ、いち早くソリューションを提供できるかどうかがポイントになってくるのだと思います。
上記の変化を捉えて5Gに向けて新たな取り組みを行っている企業があれば、次回以降のコラムでとりあげてみたいと思います。
今回は以上です。