5Gの技術仕様書(Technical Specification)の探し方
現在、5G( 第5世代移動体通信 )規格必須特許の確保に向けた競争が繰り広げられています。
https://eetimes.jp/ee/articles/2001/15/news036.html
ところで規格必須特許の作り込みには、技術仕様に関する理解が重要になります。5Gの技術仕様は3GPPが策定していますが、慣れていないと必要な仕様書を探すの苦労します。そこで今回は5Gの技術仕様に関するドキュメントの探し方について書きたいと思います。
3GPPとは
5G(第5世代移動体通信)などの移動体通信システムの技術仕様は3GPP(Third generation partnarship project)というパートナーシッププロジェクトによって策定をされています。3GPPは法人格を持った団体ではなく、米国、欧州、日本、韓国、中国の各国・地域の標準化団体によって共同で立ち上げられた標準化技術策定のためのグループであり、このグループのことをパートナーシッププロジェクトと呼んでいます。この3GPPが策定した技術仕様が国連の専門機関の一つである国際電気通信連合:ITU(International Telecommunication Union)に提案され、国際標準として勧告され、その内容が各国や地域の標準規格となります。
リリースとは
3GPPは関連する複数の技術項目に関する仕様をパッケージした”リリース(release)”という単位で仕様策定を行っています。5Gに関する項目はリリース15~17として策定されています。リリース15の策定は完了し、現在リリース16及び17についての作業が行われています。
各リリースで策定された内容のサマリーは、Release Descriptionとして公開されます。リリース15のRelease DescriptioであるTR 21.915は以下のURLから入手可能です。2020年3月1日時点の最新バージョン15.0.0になります。
https://portal.3gpp.org/desktopmodules/Specifications/SpecificationDetails.aspx?specificationId=3389
上記URLにアクセスし、”Versions”のタブをクリックして、バージョン番号の15.0.0をクリックすると”21915-f00.zip”というzipファイルがダウンロードできます。この中zipファイルを解凍した中に含まれる”21915-f00.doc”というワードファイルがRelease Descriptionになります。このドキュメントの中に、リリース15で仕様として策定された内容がまとめられています。特に第4章にリリース15の内容がサマライズされており、以下のよう記載されています。
4 Rel-15 Executive Summary
3GPP main area of work in Release 15 is the definition of the initial phase of 5G, the Fifth Generation of Mobile Communications, also referred to as “5GS” (“the 5G System”).
5G is to be defined in at least 2 phases, the phase 1 being specified in Release 15, as summarised in the present document. Subsequent phase(s) will be specified in future Release(s).
Beside 5G Phase 1, Release 15 also specifies, among other Features: further enhancements on Critical Communications (including Ultra Reliable Low Latency Communication and Highly Reliable Low Latency Communication), Machine-Type of Communications (MTC) and Internet of Things (IoT), Vehicle-related Communications (V2X), Mission Critical (MC), and features related to WLAN and unlicensed spectrum.
The continuation of the present document provides an exhaustive view of all the items specified in Release 15 by 3GPP.
5Gの仕様策定はフェーズ1とフェーズ2に分かれて仕様策定が行われており、リリース15はフェーズ1に相当し、フェーズ2はリリース16以降で策定されること、リリース15では5Gに関連する項目以外にも、LTEやLTE Advanceに関する拡張仕様も含まれていることがわかります。
技術仕様書(TS文書)と技術報告書(TR文書)
しかしながら、リリース15のRelease Desicriptionである TR 21.915 は技術仕様そのものが記載されたドキュメントではありません。3GPPでは技術仕様書(Technical Specification)として承認された冒頭がTSで始まる文書が公式の技術仕様書となります。一方、冒頭がTRで始まる文書は技術報告書とよばれます。これも3GPPとして正式に承認した文書になりますが、有益な技術情報書をまとめた文書という位置づけで、技術仕様が定義された文書というわけではありません。
シリーズとは
また技術仕様書と技術報告書はシリーズ(series)という単位でまとめて管理をされています。シリーズとは各ドキュメントを主題別に分類したものになります。5Gに用いられる無線技術(5G NR(New Radio))を主題とするドキュメントは38シリーズに分類され、これらのドキュメントは、TS 38若しくはTR 38で始まる文書(例えば、TS 38.101-1やTR 38.801など)となります。
なお5Gに関連する仕様書がすべて38シリーズに分類されているわけではありません。シリーズ38には5G関連のうち、主題が無線技術に関する仕様書が分類されるのであって、無線技術以外の場合は他のシリーズに含まれることになります。例えば5Gに関するサービス面からの要求仕様に関しては、シリーズ22に含まれるTS 22.261で規定されています。
以下の表は3GPPのウェブサイトの以下のSpecification Numberingのページから抜粋したものになります。この表の各シリーズ番号をクリックするとそのシリーズに分類されているドキュメントのリストのリンクページに飛ぶことができます。
例えば、”38 series”をクリックすると、以下のようなページが表示されます。以下のようにドキュメント番号とそのドキュメントのタイトルが記載されたリストが表示されますので、所望のドキュメントのspec numberをクリックします。
例えば、TS 38.101-1をクリックし、開いたページで”Versions”のタブをクリックすると以下のようなリストが表示されますので、必要なversionをクリックするとzipファイルのドキュメントを入手することができます。例えばRelase 15に関しては最新のバージョンは15.8.2になっています(2020年3月1日時点)